長い年月が掛かりました
12年ほど前は、娘 豹の病魔を知り、重篤さを知り
私は出口の見えない暗闇のトンネルの中でした
寝ている時でさえ ふと気が付くと
奥歯を食いしばっている自分がいました
今 二人して穏やかに回顧できます
新しい住まいに豹を連れて来て、その年はエアコンを取りつける経済余裕なく
やっとそれぞれの部屋にエアコンを設置出来た時
私は 大満足だったのですが
彼女は エアコンには盗撮器が仕掛けられている、そう思っていたそうです
火災探知機も盗撮器に見え、
お風呂の温度調整器には盗聴器が仕掛けられている
常に監視されている…
健常者には 到底想像もつかない突飛な被害妄想です
そんな妄想の内容を
やっと十年経った昨今、本人の口から聞くことが出来ました
「アンタの病気なんか 大したことないわよ」、口に出さず
態度で示す…
12年前から 私は、自室に引き籠る豹にお構いなく
時には、スポーツジムの友人を家に招き お喋りしたり、買い物に付き合ったり
ある時は、日曜大工に没頭したり、飾り物を作ったり
時には、インテリアに燃えて壁紙を貼ったり、模様替えをしたり
ある時期は、ネット友達との交信に夢中になり パソコンにへばりついたり…
豹の病から 眼を反らし続けました
学生時代、クラスの男子がニキビだらけの顔で したり顔で言った持論を覚えています
「探し物が見つからない時は 探してはダメなんだ、
探してないふりをする
そうすると 相手が油断して出て来るんだ」
「探し物」の応用編でしょうか
私は今、やっと
トンネルの出口の灯りが見えた様な気がしています
