神戸連続児童殺傷事件
「暗い森」1998年発行
この本は朝日新聞社から発行された本なので
第三者の眼で 事件の経過を感情を交えず書かれていましたが
微妙に違う点が興味深かったです
毎日新聞社から発行された「小学生連続殺傷事件 少年 神戸からの報告」が 学校教育や社会背景に的を当てているのに比べ
こちらは、主に少年Aに的を当てていました
そこには
小学生の頃、担任教師が近づくだけで ビクッと身をこわばらせ
パッと両手を頭にかざし 身構えることがあり、それが一度や二度ではなかった
小四の時には ある時は首から背中にかけてみみずばれの様な跡があった
A少年の母親の手記「少年A この子を生んで」では 体罰には ふれていなかったものの
「厳しく躾けました」と公然と書かれていたのに加え
この本では
【(母親の)しつけは厳しかったようだ。幼稚園で恥をかかないようにと、着替えや食事の仕方、後片付けまで、繰り返し注意した。少年が弟の玩具を取り上げたりすれば「何で泣かせるの」と言って、他人が見ている前でも 尻を叩いた。】
おそらく 厳しい体罰があったと想像出来ます
【未分化な性衝動と攻撃性との結合により持続的かつ強固なサディズムがかねて成立しており、本件非行の重要な要因となった】
【低い自己価値感情と乏しい共感能力の合理化・知性化としての『他我の否定』すなわち虚無的独我論も本件非行の遂行を容易にする一因子】
何やら難しい言葉が続きました
【本件非行は長期にわたり多種多様にして且つ漸増的に重篤化する非行歴の連続線上にあって、その極限的到達点】
ユーチューバーの中では少年Aの犯罪を「性癖だから治らない」
と言ってる人もいました
後出しじゃんけんですが、私はA少年の脳のダメージを
思い浮かべています
【激しい体罰の脳への影響】
小児期に過度の体罰を受けると,素行障害や気分障害といったさまざまな精神症状を引き起こすことが知られている。しかしながら,過度の体罰の脳への影響はこれまで解明されておらず,また,体罰を受けたヒトの脳の形態画像解析もこれまで報告されていない。
一般に体罰は「しつけ」の一環と考えられているが,驚くべきことに「体罰」でも脳が打撃を受けることがわかった。厳格な体罰(頬への平手打ちやベルト,杖などで尻をたたくなどの行為)を長期かつ継続的に受けた人たちの脳では,前頭前野の一部である右前頭前野内側部の容積が平均19.1パーセントも小さくなっていた(Tomoda et al,, 2009)。この領域は前頭前野の一部で,感情や思考をコントロールし,犯罪抑制力に関わっているところである。さらに集中力・意思決定・共感などに関わる右前帯状回も,16.9パーセントの容積減少がみられた。物事を認知する働きをもつ左前頭前野背外側部も14.5パーセント減少していた。
これらの部分が障害されると,うつ病の一つである感情障害や,非行を繰り返す素行障害などにつながると言われる。体罰と「しつけ」の境界は明確ではない。親は「しつけ」のつもりでも,ストレスが高じて過剰な体罰になってしまう,これが最近の虐待数の増加につながっているのではないかと思われる。