「ちょっと山暮らしをしてみる」
そう言って 末っ子の虎が猿夫の生家に移り住んだのは
十三~四年前でした
既に祖父・祖母(私にとっては舅・姑)ともに 向こうの国に旅立った跡だったので
空き家になっていました
その猿夫の故郷で、チータさんと知り合い
結婚招待状が送られて来たのは十年ほど前のことです
当時は まだ私は猿夫の商いを手伝っていなかったので
《別居中の仲の悪い夫婦》そのものでした
若い二人は誰の干渉をも受けず
東南アジアの小さな島で式を挙げる、とのことでした
おそらく 挙式含めての新婚旅行ツアーに申し込んだのでしょう
十年前と言えば・・
私は眼の手術を終え 後遺症が残ったまま治療終了となり
なんとか日常生活は可能、と言う状態
娘の豹の方は、まだまだ自室で寝ている時間が
一日の大半を占めていました
でも、一生で一度のイベントです
私は返信はがきではなく、携帯メールで
「頑張って行くヨォ~!!」
と返事を返したと思います
その夜でした
虎が慌てた感じで電話して来ました
「いや、(汗)あれは形式上送った案内状で…
ほんとは来て欲しくない…」
どうやらお相手のチータさんや その縁の方々が
《仲の悪い夫婦》が式場で鉢合わせすると 気まずくなるし
気を遣うから、と言うのが理由でした
「ありゃま、残念」
考えてみれば、パスポートを取る手続きや
慣れない電車・飛行機を乗り継ぐのは、私達病人の母娘にとっては
少々 負荷の掛かる作業です
私はあっさりあきらめました
後で聞いたところでは、結局 猿夫も式に出席せず
花嫁のご両親・親戚数人と、花婿側では兄のライオンがただ一人の参加者だった様です
でも、「あの時、無理してでも行っとけばよかったね (ΦωΦ)フフフ…」
と 今 豹と話しています
「別れたいと思っている」
虎に そう告げられたのは今年の初め頃でした
そして 先日も気持ちを確かめたところ、
その思いに揺るぎは無いそうです