『気ちがい』 幼かった頃、そう呼ばれている人は
確かに通りで見かけました
着たきりスズメで不潔感あふれ、髪は汚れと汗でべったり
明らかに異様ないでたちでした
時には 傍に誰も居ないのに一人しゃべっているのです
母は警戒感をこめて、 近づかないよう
そ知らぬ顔で通り過ぎるよう 私に教えました
11年前、かろうじて食事時に横に座る娘 豹は
全く その姿とダブっていました
顔を洗うのも、髪をとかすのも面倒だったのでしょう
寝着姿のままで山姥の様な頭、体臭もプンと臭って来ました
話しらしい話しもせず、食べ終えると
最小限、自分の使った食器だけを洗い
また眠りにつく、そんな日が延々と続きました
一日ほとんどを寝て過ごし
私は外出する時には 行き先のメモを置き
食べ物は発泡スチロールの箱に、お茶さえ温め、入れておくのです
保温箱に入っているとは言え、やはり冷めて来ます
冷めた焼き飯でも、レンチンせずに食べていました
とにかく 何をするのも億劫、そんな感じでした
豹が そのままの姿で外に出ると、
間違いなく『気ちがい』でした